自閉症の子どもがお友達を叩いたり噛んだりしてしまう理由

   2018/03/21

自閉症の子どもがお友達を叩いたり噛んだりしてしまう理由

幼稚園や保育園、学校などに進学するとお友達の中での集団活動が中心となります。

その集団活動の中でよく耳にする問題行動として、『お友達を叩いてしまう』『お友達を引っ張ってしまう』『お友達を噛んでしまう』『お友達を蹴ってしまう』といった一見暴力行為や他害行為にとらわれてしまう行動です。

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お友達に手を出してしまうとお友達から嫌われてしまう他、周囲からも「暴力的」「乱暴」などと見られてしまい、本人も辛い思いをしてしまいます。

ではお友達に手を出してしまう理由や状況やにはどのようなものがあるのでしょうか。

お友達を叩いたり引っ張ったり噛んだりしてしまう理由

自閉症や発達障害の子どもがお友達に手を出してしまう理由や状況について、「コミュニケーションの問題」「感覚の問題」「力の加減」など、自閉症や発達障害に見られる特徴から考えてみました。

コミュニケーションの一環として

自閉症の大きな特徴の一つに「コミュニケーション能力の困難」と言うものがあります。自閉症の人は言葉を発するのが難しい事や、言葉を話せても適切な会話をする事が困難です。

健常の人であれば、名前を呼んだり「ねえねえ」「すみません」などを声をかけて、相手に話しかける事が出来ますが、自閉症の人にはそれがとても難しい行為になります。

そのため、相手に気が付いてもらいたかったり、何らかの意思を伝えたい為に叩いたり引っ張ったりしてしまう事があります。

実際に相手に気付いてもらいたいためや、大好きな人にちょっかいを出す目的で、お友達や好きな大人を叩いてしまう子供も目にします。中には大人と体を使った遊びがしたい目的で、背中に飛び乗ったり、いきなり抱きついたりという行動を取る場合もあります。

相手の反応を楽しんでいる

これもコミュニケーションの一環ではありますが、叩いたり引っ張ったりする事で相手の気を引いたり、相手からの反応や注目を得て楽しんでいる場合もあります。

相手の反応を見て楽しんでいる場合には、相手が困ったりする様子、相手が怒る様子、相手からの注意などに楽しみを見出しています。そのため、注意や怒っても余計に相手が楽しんでエスカレートする事もあります。

この場合の対応方法では怒ったり注意をすることは逆効果になってしまうので、叩かれても反応せず無視をしたり、別のコミュニケーション方法などを促すことが必要になります。

力の加減やコントロールが苦手

自閉症や発達障害の子供は力の加減やコントロールが苦手という特徴が見られる事があります。力の加減やコントロールが苦手な原因には、固有感覚と呼ばれる筋肉の動きや関節の位置などに関連する感覚が鈍いという理由があります。

この感覚が鈍いと上手に体を動かすことが出来なかったり、体の動きがぎこちない不器用となったり、手足などからだの部位がどの位置に動いているかを判断するのが難しくなります。

また、感覚鈍麻などから自分自身が痛みを感じなかったり、痛みに対しての感覚が鈍いという事があります。そのため、自分では痛くない程度に加減をしたつもりでも、一般的に見ると強い力で叩いたり引っ張ったりしているという事もあります。

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自閉症や発達障害の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net

お友達に手を出すことで感覚を得ている

自閉症の子は活動の興味の幅の狭さや感覚の感じ方の違いから、日常生活のなかで外部からの刺激を得る事が少なかったり、欲しい刺激を得る方法がわからないという事があります。そのため、人や物を叩く、引っ張る、噛み付くなどの行動で感覚を得ているという事もあります。

また、叩くなどで自分が得る刺激だけでなく、叩かれたお友達の声や逃げる様子などを含めてが感覚を得る為の行動になっている場合や、お友達に手を出すこと自体が感覚遊びの一つになってしまう事もあるので注意が必要になります。

叩くことや噛むことが感覚遊びの一環になっている場合には、太鼓など叩いて楽しめる道具や、クッションや布団など叩いてよい物への代替、シリコンやゴム製の噛んで楽しむ為の玩具などを利用する対処法があります。

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自閉症の感覚刺激や感覚遊び| 発達障害-自閉症.net

お友達に注意をしている

正義感から、ふざけていたりイタズラなどをしているお友達に注意をしようとして手が出てしまう事や、泣いている子供に対しても、「うるさい」「大きな声を出さないで」という意味で、叩いたり引っ張ったりと手を出してしまう場合もあります。

お友達を注意する場合にもコミュニケーションの問題から、適切な言葉で注意ができない為に手などを出してしまったり、問題行動などを止める為に掴みやすい腕や髪の毛や服などを掴んで引っ張ってしまう事があります。

お友達に嫌なことをされた

お友達に嫌なことをされた場合に手を出してしまうという事も有ります。
嫌なことには「イタズラを受けた」「好きな事を邪魔された」など単純なことから、感覚過敏の有る子供の場合は「触られた」「大きな声を出された」という事で嫌悪感を感じる事もあります。

また、自閉症の子供は時間の概念の理解の乏しさや、フラッシュバックやタイムスリップ現象などにより、今の流れとは関係ない過去の出来事を急に思い出したり(場合によっては本人の記憶の中では今の流れと繋がっている事も有ります)して、手が出てしまう事もあります。

経験した事のある事例では、特定のお友達の顔を見ると必ず手が出てしまう子供がおり、その理由を調べてみると何年も前に遊んでいた際にふざけて叩かれて痛い思いをしたことがきっかけだったという事があります。

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フラッシュバックやタイムスリップ現象| 発達障害-自閉症.net

イライラして

ストレスや不安などからイライラしていると、周囲のお友達に手がでたり八つ当たりしてしまうことがあります。

これは自閉症や発達障害以外の子供にも見られる特徴ですが、発達段階であると自分の不安や不満、イライラする気持ちなどを抑えたり上手に発散することが難しく、周囲の人や物などにぶつけてしまうことがあります。

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自閉症や発達障害者がストレスを感じイライラする理由と原因| 発達障害-自閉症.net

感情のコントロールが苦手

自分の思っている事や気持ちなどの感情のコントロールが苦手であるために、適切な表現が出来ずに手が出てしまう事もあります。

感情のコントロールが苦手な場合には、その場面に有った言葉や意思表示方法の促しや、気持ちを落ち着けることの出来る場所への移動やその子の安心グッズ(毛布に包まる、さわり心地の良いものを抱くなど)を使えるように促すことが効果的です。

まとめ

お友達を叩いたり噛んだりしてしまう理由には様々な原因があります。まずはどのような状況の際に手が出てしまうかを調べ、その要因を取り除いたり、適切な対処方法を教えることが重要です。

手が出てしまうような状況時には、大人が近くに寄り添い、手が出てしまう前に止めるこ事と、手を出さなかったことを褒めてあげる事も重要になります。

お友達や他人に手がでる攻撃的な行動は、エスカレートして他害行為となったり、物の物品の破壊に繋がる事もあります。また、周囲の人はもちろん本人も怪我をしてしまったり、辛い思いをしてしまいます。

また、成長して体力が付くと、力が強くなってしまい相手へ怪我をさせてしまうだけでなく、周囲の大人も止めることが困難になります。そのためにも、お友達に手を出してしまう行為は小さいうちから行けない事だと理解させる必要があります。

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