自閉症や発達障害と盗み癖・万引き
自閉症や発達障害と盗み癖・万引き
自閉症や発達障害の人が商品を万引きしたり、他人の物を盗んだり勝手に取ってしまうという事はたびたび耳にします。
支援学校の関係者からも在校生がお店の商品を盗んでしまい、補導されたり問題になるといった話も聞くことが有ります。
また、物を取るだけでなく、他人の食べ物や飲み物をかってに飲食してしまうという行動も有ります。
もちろん全ての自閉症や発達障害の人が盗んでしまうと言う訳ではなく、ごく一部の人にこのような物をとったり盗んだりしてしまう行動が見られます。
では、なぜ物を盗んだりしてしまうことがあるのでしょうか?
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物をとったり盗んだりしてしまう理由
勝手に物をとったり盗んだりしてしまうのには様々な理由が考えられますが、代表的なものを調べてまとめてみました。
物の所有者の判断が出来ない
物には所有者がいるということを理解できていない事が有ります。例えばお店に並んでいるものはお店の商品、学校にある物は学校の物、お友達が持っているものはお友達の物などです。
自閉症の場合「その場の状況」などを判断するのが困難であるという特徴が有ります。そのために、その場にある物やお友達などが使っている物が誰のもので、どのように使えば良いかが分からない場合が有ります。
物の所有者の判断が出来ない場合は、人の物を取ったり盗んでいると言う事自体を理解できないので、「これは誰のもの?」というところを理解させる必要が有ります。
物を使うときの声かけや方法が分からない
物自体の所有者や使い方が分かっていても、「どのように使えばよいか」「どのように借りればよいか」が分からず勝手に取っていってしまう事も有ります。
また、自閉症の大きな特徴として「コミュニケーション能力の困難」というものがあり、他人に「借りたい」「欲しい」「使いたい」などの意思を伝えることが出来ない場合も有ります。
衝動的に物をとってしまう
衝動的とは「物事を良く考えず、本能的に行動してしまう事」で、欲しいものがあると我慢をするのが難しく、突発的に物をとってしまう行動です。
健常者の場合はまず「人の物を取ってはいけない」「人の物を取ったらどうなる」「盗んだら警察に捕まる」などを考え理性が働きます。しかし発達障害であると、物事を考えることが出来なかったり、考える前に衝動的に行動してしまう事が有ります。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の場合には「衝動性」という大きな特徴が有る為、この特性が強い場合には衝動的行動に出てしまう恐れも有ります。
こだわりや物への固執
自閉症や発達障害には物への固執やこだわりという大きな特徴が有ります。そのために、欲しい固執したものや、こだわりの一つになってしまった物を勝手に取ってしまう事が有ります。
物へのこだわりの場合、コレクション的にたくさんの物を集めてしまう事が見られます。よく耳にするのは「お友達の消しゴムや鉛筆を集めてしまう」「飾りやシールや小物などを集めてしまう」「人のお財布から小銭などを集める」などです。周囲の人がゴミだと思っているような「小石」「木の枝」「ペットボトルのキャップ」「お菓子等のパッケージ」などでも、気に入ったりすると収集する事も有ります。
お買い物やお金の概念が無い
お店の商品を勝手に持っていってしまう場合には、お買い物という一連の流れや、お金という概念を理解していない場合が有ります。
お金やお買い物という行為をを教えるのは難しいですが、一緒に買い物などに行くことで大抵の子供は「レジでお金を渡さないと品物がもらえない」と言うことは理解できるようになります。欲しい物が有る場合には本人と一緒にレジに行き、お金を手渡して商品を受け取るお買い物の流れを行わせると良いと思います。
また、特別支援学校に通学していると「校外学習」や、近所のスーパーやコンビニなどでの「お買い物訓練」を行う学習させる事も有ります。
親の気を引きたい
子供は親から構ってもらえなくなると気を引こうとする行為をとります。
代表的なものには、甘えん坊になる、駄々をこねる、叩く、大声をあげる、悪いことをするなどです。
これは障害の無い健常な子供に見られる事も多く、親の気を引こうとする行動の一つとして人の物を盗んでしまうという事も考えられます。
窃盗症(クレプトマニア)である
精神障害の一つに「窃盗症(クレプトマニア)」と言うものが有ります。
これは物が欲しいという理由ではなく「窃盗のスリルや緊張感を味わいたい」「窃盗した際の成功感や満足感を味わいたい」という目的で、窃盗や万引きを行ってしまうものです。
この場合は商品を買うだけのお金を持っていても窃盗を行ってしまい、窃盗の対象物や価値などには殆ど興味を示さないという特徴が有ります。
うつ病、性的虐待、摂食障害、月経などとの関連もあるとされ、自閉症や発達障害の二次障害として発生する可能性も有ります。
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対応方法
物をとったり盗んだりしてしまった場合には正しい対処方法をとる必要が有ります。状況や子供の発達具合などにより様々ですが、代表的な方法をまとめてみました。
駄目なことだと教える
基本的な事ですが、人のものを勝手に取ってしまっては行けない事だということをしっかりと教える必要が有ります。
これを最初にしっかり教えないと、盗んでしまう物が大きくなったり、回数が増えたりとエスカレートしてしまうことにも繋がります。
物を借りるときの声のかけ方を教える
物を借りる際に適切な声のかけ方がわからない子の場合には、黙って取るのではなく一言声をかけることと、そのときの声かけの方法を教えて上げましょう。
声のかけ方にはそのときの状態などにもよりますが「貸して」「ちょうだい」「ください」「欲しいです」などがあります。
言葉で言うのが難しい子の場合には「お願い」のサインや「下さい」のサインを教えてあげましょう。
帰宅したら荷物のチェックを行う
物をとってきてしまう行動が有る場合には、学校やお友達の家からの帰宅時にポケット内やバッグの中身などをチェックする必要が有ります。
見慣れない物や他人の物が入っていた場合には、勝手に持ってきてしまったのかを問いただし、本人と一緒に帰しに行くことで反省させる方法が有ります。
すぐに注意をする
物を取ったり盗んでしまった場合にはすぐに注意をする必要が有ります。
時間がたってからだと本人が盗んだ行為自体を忘れてしまったり、覚えていても記憶が曖昧になってしまうからです。
また、注意をする際には具体的に「盗んでしまったからお友達が困っている」「盗んでしまったからお友達が泣いてしまった」など、分かりやすいな理由で説明する必要が有ります。逆に「自分の大切なものが取られてしまったらどう?」と自分の気持ちに置き換えてあげるのも効果的です。
返却や謝りに行く
他人の物やお店の物を勝手に取ってしまった場合には、子供と一緒に返却と謝罪をしにいく必要が有ります。
親から怒られてもあまり効果が見られない場合でも、見ず知らずの他人や店員さんから怒られたり注意を受けることで「駄目なこと」「やっては行けない事」と理解できる場合も有ります。また、本来の意味とは少し違ってはしまいますが「あのお店で盗むと店員に怒られる」という記憶が鮮明に残り、そのお店では物をとったりすることが無くなる場合も有ります。
自分が怒られても何で起こられているのかわからない場合でも、謝罪している母親や父親を客観的に見ることで、「親が泣いて謝っている」「親が怒られてかわいそう」と感じ、物をとる行為は「やってはいけない」と理解する事も有ります。
お買い物の経験を増やす
お買い物の理解や概念が無く、お店から商品を勝手に取ってしまうこの場合にはお買い物を行う経験を増やしましょう。
お買い物をの経験をつむことで、商品がほしい場合にはお金と交換するという理解につながります。
スーパーやコンビニなどに行った際には、お菓子など好きな商品を選ぶ事とレジでお金を払って商品を受け取るという経験をさせてあげましょう。
実際にお店に行くのが難しい場合には、自宅でお買い物ごっこを行ったり、おやつの際にお菓子とお金を交換するといった練習を行うのも良いです。
お約束カードやご褒美を用意する
お約束カードを作り、盗まなかったらシールやスタンプを貼り、全部埋まったらご褒美をあげるなどの方法も有ります。また、物が欲しくて取ってきてしまう場合には「お誕生日まで取るのを我慢できたら欲しいものを買ってあげるよ」などのお約束も効果が見られる場合も有ります。
自分に置き換えさせる
発達障害の子は他人への意識や人の気持ちを感じ取るのが難しい事があります。
そのために人の物を勝手に取ってしまっても、それに持ち主がいる事への理解がなかったり、取られた人が感じる怒りや悲しみがわかりません。
このような場合には実際に子供本人に、自分の大事なものが勝手に取られたらどう思うか、自分に置き換えて考えてもらいましょう。
他人の気持ちの理解が難しい子でも、自分に置き換わると理解ができる事も多いです。
本人の気持ちや状況を考える
物を盗んだりとってしまう行為は、本人の中で何らかの心理的要因があることが多く見られます。
心理的要因には「欲しい物が買ってもらえない」「1つではなくたくさん欲しい」「親の気を引きたい」「親への不満」「親子関係の破綻」「虐待」「イジメ」「不安や不満」「何らかのストレス」など、物をとる行為とは全く関係ない理由からも気持ちが不安定になってしまい、このような行動を取ってしまう事も有ります。
子供の様子がおかしいと思ったときには、まず本人の状態を良く見て適切に対処する必要が有ります。精神的に不安定になっている場合などは物をとる行為以外にも、問題行動と呼ばれる行動が見られるはずです。
専門家に相談をする
児童相談所や心理士・セラピストには盗み癖などに対しての相談も受け付けている事が有ります。また、盗み癖などの問題行動は、子供の心理状況発達状況、や家庭内の問題や親子関係がきっかけになる事も有ります。専門家に相談することで、様々な角度からのの意見や対処方法を提案してもらえると思います。
まとめ
物をとったり盗んだりする行為は自閉症や発達障害の特徴や特性を原因とする場合、発達や経験の未熟さを原因とする場合、子供ならではの特徴や精神的な問題を原因とする場合など様々です。対処法も状況や原因、子供の障害の程度や特徴などにより様々が考えられます。
物をとったり盗んでしまう行為はやってはいけない行為だということを教えると共に、早いうちに対処を取る必要が有ります。
物をとったり盗んでしまう行為はすぐには無くなる事はないと思いますが、叱られたり注意を受け経験を積んだり、成長と共に様々なことを学習することで徐々に解消することができると思います。
家庭内で対処できない場合には、児童相談所やカウンセラーに相談したり、学校などとも連携していくことが重要になります。