発達に遅れの有る子供が優先順位を付けられない理由

 

発達に遅れの有る子供が優先順位を付けられない理由

発達に遅れのある子どもは、その特徴から優先順位をつける事が難しい場合があります。

本来やるべき事をやらずに別の事を行ってしまったり、物事の順番が逆になってしまうこと、アレもやろうコレもやろうと考えバタバタしているうちに結局何も出来なかったということあります。

大人の発達障害の方も社会に出てから仕事の優先順位がつけられず、困ってしまうということも多いようです。

では発達に遅れのある子どもはどの様な理由から、物事の優先順位を付ける事が出来ないのか調べてまとめてみました。

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優先順位を付けるのが難しい理由

発達に遅れの有る子供は、今後の見通しが立てられない、思ったことを優先してしまう、記憶の能力の問題などから、優先順位を付けるのが難しいとされています。

状況や物事の判断が難しい

発達に遅れのある子どもは現在の状況を理解したり、今後の事を予想したりする事が苦手です。そのため、他の作業や予定、これからの事などを考えて物事に優先順位やランクをつけるということが難しくなります。

優先順位には「先に行わないと次のことが出来ない」「時間がかかるので最初に行う」「締め切りや終らせる時間が決まっている」「重要事項である」など、様々な要因から決められますが、それらの理由を重み付けする事が出来ないこともあります。

場合によっては「物事の全体を考える」「段取りを組む」「作業を逆算する」なども必要になってくるのでより困難になる場合もあります。

また、知能的な面や経験不足などから、優先して物事を行わなければならないという根本的な概念自体の理解が難しいという面もあります。

大人と子供では重要度が違う

基本的に子供と大人では物事の考え方や価値観や重要度が違うことが多いです。そのため、優先順位に関しても、大人が考えている順番と子供が思っているものでは大きく違うことがあります。

たとえば学校から帰ってきたら最初に宿題をやったり学校の道具の片づけをやって欲しいと大人は思いますが、子供からしたら『おやつを食べる』『ゲームをする』『友達と遊ぶ』ことなどが最優先だと思っています。

このように価値観や考え方が違うと物事の重要度も異なってくるので、子供本人は優先順位の高いものから行っているつもりでも、周囲の大人から見るとやることをやらないで遊んでいると思われてしまうこともあります。

好きな事や思いついたことを優先してしまう

ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの障害を持っている場合には、衝動性の特徴が強く見られることがあります。衝動性とは後のことを深く考えずに目に入ったことや思いついた行動を突発的に取ってしまう症状です。

衝動性の傾向が強いと物事の順番を考えるのが難しく、思い立ったことや気になった事を
優先してしまう事があります。

また、優先順位や物事の順番などを理解しており、「コレは今やるべきことではない」とわかっていても、思い立った行動に走ってしまうこともあります。

記憶が上書きされる

発達に遅れのある子どもの場合、後から聞いた情報が優先されることあります。これは後から聞いた情報の方が新しく新鮮でなので覚えているという理由や、記憶の内容が上書きされるという特徴があるためです。

そのため優先的に行うべき行動をしている途中でも、新しい情報が入ってきてしまうとそちらが重要だと思ってしまい、本来優先的に行うべき事から外れてしまうということがあります。

ワーキングメモリーが弱いため

ワーキングメモリーとは作業や行動を行うために一時的に情報を記憶する能力で、「作業記憶」とも呼ばれる事が有ります。ワーキングメモリの例としては「会話をする」「黒板を書き写す」「買い物時に金額を見て財布からお金を出す」などの際に使われる記憶力です。

このワーキングメモリの能力が発達に遅れのある人は弱いといわれており、作業などで内容を聞いてその事を覚えている事が出来なかったり、それ以前に指示されていた作業内容を忘れてしまうため、優先順位をつけるのが難しいということがあります。

優先順位を付けられない場合の対処法

優先順位を付ける事が出来ない場合には、苦手としている部分をフォローしたり、メモや計画表などを使用して補うという方法があります。

一度にたくさんの指示を出さない

発達に遅れのある子どもは一度に多くの事を言われたり指示をされても、理解ができない事があります。

また、理解が出来ないばかりか、内容が一緒になって違う意味で捉え混乱する事もあったり、前半の内容や途中の指示を忘れてしまうということもあります。

指示を出す際には基本的に1回に1度の指示にして、1つのことが終ったら次の内容を伝えるようにしましょう。

優先順位を理解させる

優先順位をつける事が難しい場合には、優先順位のつけ方などを教えて理解してもらう必要があります。

優先順位を教えるためには「何時までに終わりにしないといけないから」「コレを先に行わないと次のことが出来ないから」「作業が難しく時間がかかるから」「重要な事柄だから」など具体的な理由を教えてあげましょう。

時間の概念や物事の重要度などは目に見えない部分で、発達に遅れのある子供が不得意とする場面であるため、周囲の大人がフォローをして理解を促しましょう。

優先順位を伝える際にはどうして他の事よりも優先しなくてはいけないのか、本人が理解できるように伝えることで、見通しもつけやすくなり行動自体もスムーズに行えるでしょう。

優先順位を本人に考えてもらう

優先順位を理解できるようになったら、子供本人に行う事の優先順位をつけてもらう練習を行いましょう。優先順位をつける際には時間的な面や重要度などから、どれを最初に行うべきかを考えてもらい、紙やメモなどに「1番には何を行う」「2番には何を行う」といったように箇条書きなどで書くと良いでしょう。

優先順位をつける際に悩んでいたり、明らかに違う順番になってしまう際には、周囲の人がフォローをしてあげましょう。

作業の優先順位をメモする

言葉で受けた指示や作業の優先順位を忘れてしまうという場合には、メモやホワイトボードなど目に付く場所に記載しておくと忘れ難くなります。発達に遅れのある子どもは耳からの情報よりも、視覚からの情報を優先するためメモなど目に見えるものは有効な方法です。

メモは作業の優先順位だけでなく、何時までにやるのか、残りいくつの作業があるのか等を具体的に示して見通しをつけやすくするとより効果があります。

計画表を作る

事前に作業や行うことなどが分かっている場合には、ちょっとした計画表を作ることも効果的です。計画表には行う事の項目を優先順位が分かるように表示したり、何時までに終わりにさせるといったことが理解し易いようにすると良いでしょう。

作業が時間単位の場合にはタイムラインが分かるような表示にし、何日もかかるような場合にはカレンダーのように日付が意識できるものを使いましょう。

時間や日にち・曜日の理解が難しい場合には時計やタイマーを用いたり、今(今日)はココで終わりは何処なのかが視覚的に分かるように、目印などをつけると理解がしやすくなります。

指示を受ける

自分ひとりで優先順位をつける事が難しい場合には、そのつど周囲の人に確認をしたり判断をしてもらうという方法があります。

優先順位が分からなくなってしまった際には「いつまでに終わりにすればよいのか」「Aの作業とBの作業があるがどちらを先にやればよいのか」などを確認すると良いでしょう。

私自身も仕事で複数の業務を振られて判断が出来なくなった場合には上長に「AとBの作業があるのですがどちらを優先すればよいか?」を確認し、優先順位の判断を受けるようにしています。

また、作業の指示を受けた時点で「今はAの作業を行っていますが、どちらを先にしたほうが良いか」の判断を受けると良いでしょう。この際には先に終った作業の後にもう一つの作業が控えていることを本人が忘れないようにする工夫も必要です。

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まとめ

発達に遅れの有る子供は、その特徴や特性などから優先順位を付ける事が出来なかったり苦手としています。

優先順位を付ける事が難しい場合には様々な経験をさせて、物事には順番があったり、優先的に行うべき事、先に行うと次の事がスムーズに行くことなどの理解に繋がる支援をしてあげましょう。

また、メモや予定表などを使って苦手な部分を補ったり、周囲の人がフォローをしてあげることも重要です。

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