強度行動障害とは

   2016/04/17

強度行動障害とは

強度行動障害とは「直接的な他害」「間接的な他害」「自傷行為」が非常に多い頻度で見られ、通常の環境下では対応が非常に困難な特性を持つ人をさします。

強度行動障害が見られる障害や疾病には自閉症、知的障害者、精神薄弱者、精神病者などが有ります。
その中でも特に、知能指数が低く重度の自閉傾向にある自閉症の患者に強度行動障害が多く見られています。

強度行動障害の定義

強度行動障害は「直接的他害(噛みつき,頭つき,など)や間接的他害(睡眠の乱れ,同一性の保持),自傷行為などが,通常考えられない頻度と形式で出現し,その養育環境では著しく処遇の困難なものをいい,行動的に定義される群」と1988年に行動障害児(者)研究会において定義されました。

強度行動障害者の人数

強度行動障害者の人数は正確な全国調査は行われていませんが、鳥取県の調査で療育手帳交付者の約1%が強度行動障害であったと報告されています。
そのため、日本全国では約80万人が療育手帳を交付されていることから、日本では約8000人が強度行動障害であると考えられています。

強度行動障害が現れる理由

強度行動障害の粗暴な特徴が見られる理由には、本人に対し周囲から様々な刺激や情報が入ってくるがその物事が理解または処理が出来ないことが原因である場合と、物事を伝えたいが上手く伝わらなかったり伝える手段が無いことが主な原因となっています。
また、強度行動障害者が自閉症の場合には、物事の考え方や感覚が健常者と違う場合が多く、お互いに理解が難しいという事も理由の一つになります。

そのため、強度行動障害は周囲を困らせたりする行動ではなく、本人が困っていサインだと考えるべきです。

強度行動障害が現れる時期

強度行動障害は生まれたときから見られるわけではなく、成長するにあたり障害の特性や生活の環境から徐々に見られるようになります。

一般的に中学校や高等学校の時期に多く見られ、学校卒業後には比較的落ち着くケースが多く見られています。

中学校や高等学校時期は思春期に当たり心身ともに変化が見られるほか、環境の大きな変化、様々な周囲との係わり、学業も比較的難しくなる事から、問題となる行動が多く見られると考えられています。

強度行動障害判定基準

強度行動障害の判定は1993年から厚生労働省が示している「強度行動障害判定基準表」または「行動援護の判定基準表」に基づいて判定されます。

強度行動障害判定基準表は旧法等における基準として用いられ、行動援護の判定基準表は障害者自立支援法および障害者総合支援法の基準として用いられています。


強度行動障害判定基準表

強度行動障害判定基準表には「ひどい自傷」「強い他傷」「激しいこだわり」「激しいもの壊し」「睡眠の大きな乱れ」「食事関係の強い障害」「排泄関係の強い障害」「著しい多動」「著しい騒がしさ」「パニックでひどく指導困難」「粗暴で恐怖感を与え,指導困難」の11項目をそれぞれ1日に何度発生するかなどの頻度から、「1点」「3点」「5点」の3段階で点数化し評価をします。
点数は10点以上の場合に強度行動障害と判定します。

ひどい自傷

ひどい自傷の項目には「肉が見えたり酷く出血するほどの噛み付き」「頭部が変形するほどの叩き」「爪をはがしてしまう」などが有ります。

強い他傷

強い他傷の項目には「殴る、蹴る、噛み付く、頭突き、目を付くなどで、相手が怪我をしかねない行為をとる」などが有ります。

関連ページ
他害・他傷・暴力行為の原因と対処法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

激しいこだわり

激しいこだわりの項目には「服を脱いでしまったり、移動や外出を拒んでしまうなどの行為で、動作を止めたりすることが非常に困難なもの」となっています。

激しいもの壊し

激しいもの壊しの項目には「ガラスやドアや壁などを壊す、他人のメガネを壊したり服を引き裂いたりする行為で、本人や周囲に影響や危険が大きい行為」となっています。

睡眠の大きな乱れ

睡眠の大きな乱れの項目には「昼夜の逆転」「寝ることが出来ず夜間に人やものに危害を与える」などが有ります。

食事関係の強い障害

食事関係の強い障害の項目には「異食や体に異変を引き起こすほどの偏食」「食べ物を投げる」「テーブルをひっくり返す」などが有ります。

関連ページ
偏食(食べ物の好き嫌い)が多い – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

排泄関係の強い障害

排泄関係の強い障害の項目には「便を指でこねる」「便を壁などに擦り付ける」「便を投げる」「強迫的に排泄行動を繰り返す」などが有ります。

著しい多動

著しい多動の項目には「一時も留まることが出来ず常に走り回る」「周りを注意せず飛び出す」「高く危険な場所に登る」などが有ります。

関連ページ
自閉症と多動 – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

著しい騒がしさ

著しい騒がしさの項目には「周囲が迷惑するほどの大声を出す」「泣き始めると大泣きが何時間も続く」などが有ります。

粗暴で恐怖感を与え,指導困難

粗暴で恐怖感を与え,指導困難の項目には「激しい行動を呈し周囲が恐怖を感じさせる状況となる」などが有ります。

パニックがひどく指導困難

パニックがひどく指導困難の項目には「パニックになると体力的にも収拾が出来ない状態となる」などが有ります。

関連ページ
パニックとその対処方法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

行動援護の判定基準表

行動援護の判定基準表では「本人独自の表現方法を用いた意思表示」「言葉以外の手段を用いた説明理解」「食べられないものを口に入れる」「多動又は行動の停止」「パニックや不安定な行動」「自分の体を叩いたり傷つけるなどの行為」「叩いたり蹴ったり器物を壊したりなどの行為」「他人に抱きついたり、断りもなくものをもってくる」「環境の変化により突発的に通常と違う声を出す」「突然走っていなくなるような突発的行動」「過食・反すうなどの食事に関する行動」「てんかん発作の有無」の12項目を「0点」「1点」「2点」の3段階で評価をします。

この評価のうち10点以上の場合には行動援護の利用や重度障害者支援加算などの対象に含まれるようになります。

強度行動障害者への支援方法

厚生労働省の資料などによると「強度行動障害者への支援に当たっての基本的な考え方」は以下の6点が基本であると示しています。

  • 構造化された環境づくり
  • 医療など多職種との連携
  • リラックス出来る環境
  • 一貫した対応が可能なチーム体制
  • 自尊心の尊重
  • 地域で継続的に生活できる体制づくり

構造化された環境づくり

構造化された環境づくりとは、生活環境での問題点を洗い出し問題となる部分を改善していく事です。
例えば音が原因で問題行動が出る場合には「静かな部屋を用意する」「目に付く場所にヘッドホンやイヤーマフを置く」などが有ります。

医療など多職種との連携

強度行動障害者の対応は家族だけでは難しいことがほとんどです。
その為、医師、教師、心理士、言語聴覚士、その他専門家、地域の支援者などとの連携が必要になります。
特に医師との連携は重要で、診療や適切な薬の投与を行うことで問題行動を落ち着かせる事も効果的な対処方法のひとつとなります。

リラックス出来る環境

リラックスできる環境として本人に必要以上の負担やストレスを与えない生活の場を作ることが大事です。
自宅だけの生活ではなく、日中や長期の休みなどに通うことの出来る福祉サービスを利用するのも気分の切り替えが行え、効果が有る場合も有ります。

一貫した対応が可能なチーム体制

強度行動障害者に対応する場合には、通常様々な福祉サービスを利用することとなります。
支援の際には、ヒアリングやアセスメントを元に作成した支援内容を組織やグループで共通の理解として認識し、一貫した対応を行う必要が有ります。
その時々により支援方法がバラバラであると、本人が混乱してしまいより強い問題行動へと繋がる恐れも有ります。

自尊心の尊重

強度行動障害者の言動に対して、抑制したり押し付けたり批判をすると自尊心を傷つけてしまう事が有ります。
危険や問題の無い限りにおいては本人の意思を尊重することが重要となります。

地域で継続的に生活できる体制づくり

地域で生活を行うためには家族や親族の協力、地域での理解、地域のボランティア組織、行政の福祉などとの連携や協力が重要となります。
また、場合によっては緊急時の医療や一時的な保護、住宅や金銭での補助や負担の軽減なども必要となる場合が有ります。

強度行動障害は基本的に障害者本人が困っている為に発生する特性であることから、本人がすごしやすい生活環境を整えることが最も重要な対処方法となります。

強度行動障害支援者養成研修

強度行動障害者を支援するための「強度行動障害支援者養成研修」と言うものも有ります。

強度行動障害支援者養成研修とは地域において、支援を行う人材の養成、強度行動障害者に対する支援体制の構築、強度行動障害者のライフサイクルと地域の実情に有った支援の開発と実践を行うことを目的に、都道府県単位での研修が行われています。

強度行動障害支援者養成研修とは、入所事業所、通所事業所、居宅介護、相談支援などの強度行動障害者の障害福祉サービスに携わる人を対象にしたもので、強度行動障害の知識や支援計画の作成方法を学ぶ目的が有ります。

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