発達障害の子は自分の気持ちや感情がわからない
発達障害の子は自分の気持ちや感情がわからない
自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害の人が、他人や相手の気持ちや感情を理解することができない特徴はよく知られていますが、中には自分の気持ちや感情を認知することができないこともあります。
子供に学校の様子を聞いても「特に」「別に」といった返事しか返してくれなかったり、こちらが具体的に「○○は楽しかった?」と聞くと「楽しかった」とは返すものの具体的に何が楽しかったかは返答がなかったりすることもあります。
これは単純に言葉でのやり取りの問題以外にも、自分の思った気持ちや感情を理解することができないためかも知れません。
自分の気持ちや感情が理解できない場合には、読書感想文などの宿題が出た際にも自分の感想が無いので感想文を書くことができなかったり、書いてもあらすじだけになってしまうということもあります。
発達障害の子も感情が全く理解できないわけではなく、なんとなく理解したりぼんやりと感じているということも多いです。
感情がぼんやりとわかっても、自分が「怒っている」のか、「不安」なのか、「悲しい」のか、「怖い」のか、「悔しい」のかの違いがわからず、ただ単に不快な気持ちとなって溜まってしまい、後々問題となることもあります。
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失感情症
自分の感情を自覚するのが難しい状況は『失感情症』や『アレキシサイミア (alexithymia)』と呼ばれます。注意点として失感情症は感覚を失っているわけではなく、感情は有るがそれがどのような状況なのかを自分で理解することができないものになります。
失感情症の特徴を持っていると、ストレスを感じても気がつかなかったり、気づくまでに時間がかかってしまう為、ストレスなどが原因で発生する様々な心身症を発症しやすかったり、心身症になった際にも治るまで時間がかかってしまいます。
自分の感情が認識しにくい理由
発達障害の子供が自分の気持ちや感情を理解するのが難しいのには、その子の特性などから様々な理由が考えられます。
気持ちの意味を理解していない
自分の行動として「楽しい」「怒る」「悲しい」などは有っても、それぞれ別の感情であったり、意味を持った気持ちだということを認識しておらず、基本的な喜怒哀楽を理解していないということも有ります。
感覚鈍磨の特徴から
感覚鈍磨の特長を持っていると、外部から受けた情報を受け取るのが鈍くなってしまうため、結果として感情の理解などにも影響が出ている場合もあります。
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社会経験不足のため
自分の気持ちや感情は、対人関係やコミュニケーションなどの社会経験から学ぶことも多いです。発達障害の子供はコミュニケーションを初めとした様々な社会経験が少ないため、自分の気持ちや感情を意識する機会が少ないことも考えられます。
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服薬の影響
癲癇予防や気持ちを落ち着かせるためなどに服薬をしている場合、眠気が出たり、ぼーっとするといった副作用もあり、これら服薬からの影響により自分の気持ちや感情が確認しにくいということもあります。
自分の感情がわかりにくい場合の問題点
発達障害の子供が自分の感情を認識するのが難しい場合には、どのような問題点があるか紹介します。
パニックやフラッシュバックにつながる
不安や怒りなどの負の感情をモヤモヤと感じていても、当初は本人も気がつかなかったりあまり気にしないこともあります。
しかし、何かのタイミングで自分の感情に気がつくと急に癇癪(かんしゃく)を起こしたように怒り出したり、溜まってしまった気持ちを受け止めきれずにパニックになることもあります。
これらの場合は原因となった事が発生した後に自分の感情に気づくため、今現在ではない事に対して怒ったり、場合によってはフラッシュバックを引き起こすこともあります。
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相手の気持ちが理解できない
発達障害の人は相手の気持ちを感じ取ることや、相手の思っている状況を理解することが苦手です。
これは相手のとの会話の内容や、表情、仕草などから相手の気持ちを理解することが難しい場合と、自分の感情がわからないため相手の気持ちに共感することができないということが考えられます。
悲しい気持ちを共感しなければならない場面でも、自分の悲しい気持ちがわからずに、状況にそぐわない言葉や仕草をしてしまいトラブルにつながってしまう事もあります。
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コミュニケーションがとりにくい
自分の感情や気持ちを感じ取ることができないと、相手や状況の共感を得ることが難しく、場にあった会話や表情などの行動をとることができなくなります。
自分の気持ちや感想を聞かれた場合にも、『わからない』『特にない』といった答えになってしまい、会話が続かなくなってしまいます。本人は自分の感情が理解できないことから真面目に、『わからない』『特にない』と答えていても、周囲からはふざけているととられてしまう事もあります。
感情と表情や行動が一致しない
感情を感じることが難しいため、苦しい時や辛い場面でも無表情や笑顔を浮かべていたり、逆に楽しい場面でも真面目な顔やしかめっ面をしてしまうということも有ります。
気持ちと表情が一致しないと円滑なコミュニケーションをとるのが難しくなったり、本人の調子が悪いときでも周囲の人が気づいてあげることができなくなる場合もあります。
体の不調につながる
自分の気持ちが自覚できないために、不安や苦しみなどの感情が分からず心身が悲鳴を上げていてもキャッチできないことがあります。
本来ならば休息すべき部分でも休むことをしないため、結果として疲労などから体を壊してしまうこともあります。また、体を壊すだけでなく、各種心身症(ストレスなどから体に影響が現れる病気)や、二次障害としてうつ病など精神面の病気につながることもあります。
なお、感覚鈍磨(感覚の受け取りが極度に鈍い状態)の特徴を持っていると、体の痛みや疲れ、暑さや寒さなどの感覚を正確に受け取ることができないため、より注意が必要になります。
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体調不良や体の不調を教えることが出来ない| 発達障害-自閉症.net
気持ちや感情の確認方法
自分の気持ちや感情がわからない子には、周囲の人がその子の気持ちを代弁し、一緒に確認してあげるようにしましょう。
例えば、怒っている時には「○○で怒っているのだね」、楽しそうにしている時には「□□は楽しいね」など話しかけて、子供本人に気持ちや感情を意識できるように促しましょう。
大人と一緒にそのときの気持ちを確認することで、徐々に自分の気持ちや感情の理解につながって行くでしょう。
場合によっては様々な場面を設定し、「こんな場合にどう思うか?」などを子供と確認するのも良い方法です。
自分の気持ちや感情を意識できるようになると、ストレスでのイライラやパニックなどを起こす事も少なくなります。
まとめ
発達障害の子供は様々な理由から、自分の気持ちや感情を意識したり理解するのが難しいことがあります。
自分の気持ちや感情を意識できないと、ストレスからのパニック、心身の不調、他人とのコミュニケーションなど様々な面で問題が発生することがあります。
気持ちや感情が意識できない場合には、子供の気持ちを汲み取って代弁し一緒に気持ちの確認をしたり、場面などを設定して思うこと感じることなどを意識させると効果があります。